日本の教育の原点であった寺子屋みたいな環境をつくることが、野球の上達にも必要なことだと思っていました。増田 なるほど。そのために何かされていますか。栗山 例えば、新人選手に対しては全員に白紙の本を配り、その本に両親や監督、お世話になった方、そして自分に向けて、将来の自分の姿を書いてもらうようにしています。すると、苦しくなった時に、その本を取り出して自分の原点や大事な人たちへの想いを振り返ることができるからです。こうした感じる力、考える力がないと野球は上手くならないんですよ。これもまた、すべて私が教育者から教わったことを、そのまま選手に還元しているだけですけどね。増田 WBCを見ていても、一流選手の非認知能力の高さは大谷翔平選手を筆頭に凄いでしょうからね。栗山 凄いです。例えば、僕はファイターズでよく「歴史は勝者の歴史なんだ。勝たなければ、せっかく良いことを行っても伝わらない」という話をします。その時に、一流選手の理解力は全然違いますね。ちょっと難しい話をしても、一流になっていく人は感じ取って、自分の頭の中で置き換えられるのです。増田 大谷選手も入団してきた時と、今とでは人間力や人間性がまったく違うのではないですか。栗山 元々、高い資質がありましたが、今は「自分がこう表現をしたら多くの子どもたちに伝わる」とか、「こういう行動が多くの人たちにプラスの影響を与えられる」とかをわかっていると思います。自分がどう行動すれば子どもたちが野球をかっこいいと思ってくれるかとか、ゴミ拾いなどの道徳的なことも自分が率先して行うことで、みんなが行動しやすくなることを、本人は言わないでしょうけど考えている感じはありますね。増田 おっしゃる通りです。それに、今はサイエンスやデータが重視されますが、同時に、教育の現場でコミュニケーション能力や忍耐力など、人間として生きるために大切な「非認知能力」が重要視されていて、教育現場でも栗山監督のような存在が必要になっています。スポーツ界でも非認知能力、例えばチームビルディングやメンタルの大切さは昔から言われてきたと思いますが、どう思われますか。栗山 理事長の言われた通り大事なことだと思っていまして、選手が人としてしっかりすると成長しはじめるというのは、人は一人で生きているわけではないことに気づけるからだと思います。そのために、SOSHI EDUCATIONAL GROUP 07
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